穴窯をやることになった最初のきっかけは、お葬式からでした。
優さんが陶芸の弟子入りをした先生が、昨年高齢でお亡くなりになりました。
葬式に出かけた時、優さんは偶然ある方に出会いました。
その葬儀場は駐車場がいくつもあり、たまたまその日、魔が差したのか
いつもと違う道を通り、いつもと違う駐車場に車を駐車しました。
そこで、もうかれこれ30年くらいお会いしていない方にバッタリ出会いました。
最初はお互いに驚きましたが、話すうちに30年のブランクがすぐに消えて
しまったそうです。
優さんの先生は35年前に穴窯を築き、毎年焼き続けていました。
でも先生が亡くなってしまった今、後を継ぐ人がいなくなってしまいました。
お葬式で偶然会ったその人は窯場の管理関係の方だったのです。
お葬式が終わるとしばらくして、その方と管理関係の社長さんがうちへ来られ、
「あの窯をこのまま朽ちさせるのは先生の意思を無駄にしてしまうことになります。
よかったら弟子であったあなたが後をやりませんか」と言われました。
そのような思ってもいなかった申し出を受けて、最初は驚きました。
ですが、優さんが引き続きやることが供養にもなると思い、先生の残した穴窯を
やることになりました。
人と人との出会いというものは、摩訶不思議なものがあると思います。
先生の葬式でその方に偶然お会いすることが無かったならば、優さんが
穴窯をやることにはならなかったと思うからです。
その方も「あの日あの場所で優さんに偶然会わなかったなら、穴窯の話が
このように進まなっかったかもしれません。葬式で亡くなられた先生が
天国から導いてくださったとしか思えませんねえ、合掌ですね」と感慨深げに
おっしゃいます。
今年になって穴窯をやることが正式に決まってから、現地を見に行きました。
およそ30年ぶりにその場所に立つことになった優さんの気持ちは如何ばかり
だったでしょう。
昔、最初にその場所に穴窯を作ることになった時に優さんも何度か足を
運んだそうですが、そこには何もなく削られた土ばかりだったといいます。
それがどうでしょう。
時移り、その時は何もなかったところに木が何本も生えそれが何メートルにもなり、
草が茫々に生えていて、過ぎ去った月日の長さを感じずにはいられませんでした。
先生はここ数年窯を焼くことはなく、荒れたままになっていました。
「まずは草刈からだねえ」と鎌を2本買って現地におもむきました。
こうした経緯で穴窯をやることになりました。
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